ステージタイガーへ

'13年 0826

太宰とピーマン(ネコ)

意外に思われることが多いけど、僕はけっこう好き嫌いが激しい。
それは食べ物もしかり、人間もしかり。

食べ物では、シイタケ、高野豆腐、人参のグラッセ、干しぶどう、あんこetc。

人間では・・・まぁ、色々。

初めて太宰を手に取ったのは中学2年の時。
文学も何も知らん僕が、暇つぶしに出向いた学校の図書館で「人間失格」を見つけたのがキッカケだった。

「人間失格」このタイトルを見て・・・完全にお笑い小説だと思っていた。

だって、人間失格だぜ?
ギャグとしか考えられんタイトルやんか。

太宰がどんな人物かも知らない僕は、そんな笑いを期待して、あの本を開いてしまったのだ。

読み進めるうちに、なんだか呼吸が浅くなり、冷や汗がしてきて、動悸がする。
引き込まれるけど、このままでは自分の何かがえぐられる気がして、コワくてたまらない。半分くらい読んだところで、2日も経たずに図書館に突き返した。

思春期には危険な毒のようで、平和に暮らしていた僕には「太宰」というワードは、何かしら、そら恐ろしいような気分がして、それからずっと手に取ることは無くなっていた。

30歳を超えて、太宰の「斜陽」を買ったのは半強制的な部分がある。
参加させてもらっている読書会の今回のテーマがそれだった。
ただそれだけの理由。

過去のトラウマが邪魔して、どうにも読み進めるのに気持ちがのらない。
手におさまる文庫でパラパラと遊んでいると、元国語教師のMさんに声をかけられた。

「昔ねぇ。私の本当に仲良かった友人グループに太宰に傾倒している社会科の男の先生がいたのよ。その友達とね。これまた同じグループにいたそれはそれは美人の英語の先生がね・・・お互いに婚約者もいたのに、駆け落ちしたの。私たちも必死に探したんだけどね。」

「はぁ、なんともロマンチックなお話ですね。」

「それがねぇ。ある日、私がアパートに帰ると、宛先不明の手紙が届いていてね。中にはアパートの鍵とその社会の先生からの手紙。慌てて彼のアパートに行って鍵を開けると、机には遺書が残っていたの。太宰の文章にそっくり似せた・・・後に、海から身投げした二人が海岸でみつかったのよね。」

文学で、人は殺せるんだなと思った。
その文学に罪はないけど。
やっぱり、言語とは、時に弾丸よりも確実に人を殺せるんだな。

その話を聞いてから、なんとなく背中を押された気がして、僕は斜陽のページをめくりはじめた。


没落していく貴族の、不愉快で、滑稽で、清廉で、時にユーモラスな物語。


一番驚いたのは、再び太宰を開いている僕が、この物語を面白いと感じて読めている事実。


あぁ、そうだ。

子供の頃は、ピーマンも嫌いだった。
あの苦みがなんとも耐えられなかった。

今のピーマンは品種改良により、昔よりは随分と甘味も増したけど、今でも子供の苦手な食べ物の上位なんじゃないかな?

ピーマンを食べない子供を見て叱る大人はいるけど、ピーマンを平気で食べる哺乳類は、じつは人間だけなんだよ。

ピーマンの苦みは、アルカロイド成分。
ナス科の植物にはアルカロイドを多く含んだ有毒なものが多いが、ピーマンもこのナス科に属している。

苦みっていう味覚は動物にとって、毒かどうかを判断するために生まれたものと考えられている。動物は、本能的に苦み=毒とみなして食べるのを避けてきた。
子供の味覚も毒物を本能的に避ける鋭敏さが大人より強いんだよね。

でも、大人になるにつれ味覚は鈍くなり、苦さへの抵抗が減るのは事実。
ゲノムレベルでいえば、人間は他の霊長類と比べて顕著に苦味への退化がみられるってさ。

あの頃は、毒にも似た怖さ感じた太宰を、今はピーマンを摘むみたいに平気でページを摘まむ僕。

大人になったと喜ぶべき?
それとも、鈍感になったのだと、少し悲しくなるべき?


ちなみに。

ピーマンにも微量に含まれるそのアルカロイド系の毒ってのは、ケシ、コカの葉、アヤワスカ・・・ようは、シャーマニズムで使われていた麻薬でもある。

太宰にはまっちゃう人、よく聞くよ。
時には死さえも甘美に惑わすような、一種、麻薬的な心酔をするのかな?


じゃあさ。
太宰はきっと、ピーマンみたいなもんだねー!
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posted by ステージタイガー at 11:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 元虎たちのブログ
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